小鮒釣り用の手網を作る

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実は、今年の2月末から注文を請けていた小鮒釣り用の手網です。
しかし、その前から依頼されていた脇差しの修復作業中であったので、直ぐには着手出来ませんでした。

鰍工房に来所して自分でも習いながら作ってみたい、というご要望でしたので、
素材の選定は3月上旬から修復作業の合間を見て行ない、
最も手の掛かる網の外枠の基底部だけ当方で作っておこうと、その部分だけは、脇差しの修復作業の漆塗りの乾燥時間を利用して、3月15日から着手していました。
4月初めには、脇差しの修復が完了したのですが、今度は新型コロナ対策で外出自粛の緊急事態宣言が出た為、鰍工房まで何回もお越し頂くのが困難になってしまいました。
そこで、今回は全て鰍工房主が作ることと決め、4月8日から本格的に製作に着手し、本日に出来上がりました。

◆素材の選定
・柄とする竹材は、伐ってから8~9年乾燥させた布袋竹としました。
 画像の上から3番目の材です。 
 画像で下の根付きの淡竹も捨てがたいと思ったのですが、
 ちょっとジジ臭くなるので止めました。
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・網の外枠の材料は、いろいろ試してみたのですが、
 何せ直径15センチの網との要望で、大概の素材は、
 そこまで曲げると大抵はポキっと折れてしまいます。
 百日紅(サルスベリ)の細枝を熱湯に浸しながら火で焙り、
 何とか希望サイズの外枠の素材を得ることが出来ました。
 写真のように縛って半月ほど掛けて再乾燥させ、輪の形に固めることが出来ました。
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・2本継ぎとする柄の込み芯は、7年ほど乾燥させてあった木斛(モッコク)材を選びました。
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・網の外枠を固定する基底部は、これも7年乾燥させた楓(カエデ)材を選択しました。
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・アクセサリーとなる、手元の小尻を作るための鹿角材です。
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◆網の基底部を作る
楓の材を鋸でカットし
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鑿(ノミ)で概略の形を削り出し
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細部は切り出し小刀で削っていきます
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挿げ込み部分も削り出し、網の外枠材と大きさを合わせていきます
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◆鹿角で手元小尻を作る
エゾ鹿角の平らな部分を探して、鉄工用の鋸でカットしていきます。
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手元尻の大きさと形をトレースし
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万力に挟み、鋸でカットしてからヤスリで削って形を整えます
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エポキシ系接着剤とステンレスビスで手元尻に固定します。
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◆柄の挿げ込み部を加工する
挿げ込み部を加工する前に、巻き糸を施して玉口を補強養生しておくことが必須です。
そうしないと、必ず玉口部が割れてしまいます。
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込み芯と挿げ込みの擦り合せを何回も繰り返し、少しずつ削って合わせていきます。
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こうやって、擦り合せが完成するのに2~3時間は掛かります。
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もう1ヶ所の挿げ込み部分も、木斛(モッコク)材で出来上がり、概略の姿が見えてきました。
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◆網枠の作成
網の基底部に外枠を挿げ込む穴を左右から穿ちます。
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この穴に百日紅材の外枠を挿げ込み、接合部は巻き糸で段差をなくし、全体を漆で塗装します。
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楓材の基底部は、この写真を撮った後で思い直し、一旦塗装を削り落として、拭き漆だけで塗り直していますので、この写真のように全体が均一の色ではなく、基底部は木地が透ける塗装に変えました。
実際には、この漆の塗装は、ここまで来るには、砥粉を混ぜた生漆の下地塗りから始め、枠部分は弁柄朱を混ぜて下塗りを行い、更に木地呂漆と呂色漆を混ぜて中塗りし、仕上げは上朱合漆で何回も拭き漆をして仕上げています。
これが仕上がれば、後の作業は、網(ネット)を取り付けるだけです。
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ついでに、私のハゲハゲになった箸も塗装しておきました。
私の漆器の味噌汁椀や箸など、何回もメンテナンスしながら20年以上も使っていますよ。

次に、外枠の内側にステンレス鋼線で内枠を作ります。
この内枠に網を取り付けて、それを外枠に取り付ける構造とすることで、網(ネット)の交換を行ない易くします。
ステンレス鋼線の末端を止める穴を基底部の2ヶ所に穿ちます。
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この小穴に差し込んで止めるよう、内枠となるステンレス鋼線の両末端は、L字型に折り曲げています。
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◆網(ネット)の作成
網の製作については、当ブログ既掲載の『魚網の繕い用に、象牙や鹿角で作った針』を参照ください。
https://kazika-koubou.at.webry.info/202004/article_7.html

出来上がった、網部です。
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少し、塗装面をコンパウンドを付けた鹿皮で磨き、これで完成です。
 ・2本を継いだ柄の長さ、60cm
 ・柄の仕舞い寸法は、32cm
 ・網部の込み芯を含む長さは、25cm
 ・網部の実際長は、21cm
と大変コンパクトです。
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これらを継いだ使用時の全長は、約81cmとなります。
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こうやって作った道具、特に釣具は、自分でも使って試してみたい気持ちに駆られますが、使用済み中古品にして依頼主にお渡しする訳にはまいりません。
『 頑張って依頼主のお役にたって、気に入って貰えよ!』 
と念じつつ、依頼主にお送りするのが常なのです。

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この記事へのコメント

2020年04月26日 08:57
にいのさん 鰍です。
毎日、ヒマしているので、この玉網も予定より早く完成。 
今は、頼まれ仕事も終わったので、更に退屈してます。
コロナ騒動のピークが去ったら、工房まで遊びにいらしてください。
掃除が行き届かなく、はなはだ汚いところですが・・・。
にいのあつし
2020年04月25日 20:06
いつもの素晴らしい物作り。
惚れてしまいます❗

私も竹竿作り、特に道具作りと魚釣り以外にも教えて頂きたい事がたくさんあるのですがこのご騒ぎで・・・。自宅謹慎なんとか我慢しています。でも、週末風が弱い日にはオイカワ釣りに行ってしまいそう。

時期が来ましたら是非、私も生徒になりたいと思っています。宜しくお願いします。